芭蕉布を愛で、学び、手に入れる。「喜如嘉の芭蕉布」展が開催
シルクラブ
「今時こんな美しい布はめったにないのです。いつ見てもこの布ばかりは本物です」。民藝運動の主唱者・柳宗悦が著書『芭蕉布物語』（1942年）でその美を称えた、芭蕉布（ばしょうふ）。亜熱帯を中心に分布する植物・糸芭蕉の繊維を原料とする、沖縄を代表する織物です。糸芭蕉の栽培から織物の完成まで約30もの工程を重ねて完成する“時間と手仕事の結晶”である芭蕉布は、第二次世界大戦で壊滅の危機に瀕しますが、大宜味村（おおぎみそん）の喜如嘉（きじょか）に生まれた平良敏子（たいらとしこ）さんが復興に尽力。芭蕉布は1974年に「喜如嘉の芭蕉布」の名前で国の重要無形文化財の指定を受け、2008年には平良さんが国の重要無形文化財保持者（人間国宝）に認定されました。
バショウ科バショウ属の常緑多年生草本である糸芭蕉。芭蕉布は、糸芭蕉の葉鞘（ようしょう：葉の根元の部分が発達して鞘状となり、茎を包んでいる部分）の繊維から織られる。
成長した糸芭蕉を刈り取り、幹の外側の皮をはぎ取っていく様子。
はぎ取った糸芭蕉の葉鞘を束ねたもの。
東京・沼袋の人気呉服店「シルクラブ」で開催される「喜如嘉の芭蕉布～花はすぐ花とはならず」展は、貴重な芭蕉布を間近に見ることができる展示会です。店主の西村はなこさんが喜如嘉の地で再現された黄金色に輝く「煮綛（にいがしい）芭蕉布」（かつて首里の王府のみで織られていた、鮮やかな彩色の芭蕉布）に出合い「おもわず声を上げるほどに」その美しさに感動したことが開催のきっかけとなりました。
「夏衣の印象がある煮綛芭蕉布の帯を、暖かな結城紬に合わせてみる」──。心に浮かんだのは、普段なら考えないような取り合わせ。不思議にぴたりと合い、「美の宿る織物は、人が作った約束事など簡単に飛び超える力があるのだ」と驚いたといいます。
「実は、琉球の染織を愛した父（先代の西村重博氏）が企画を進めながら、17年前の4月に急逝したために実現が叶わなかった『首里王府の華 首里織 七つの彩』という会がございました。私が魅了された『煮綛芭蕉布』は、“七つの彩”が意味していた首里で織られた七つの布、つまり首里花織、道屯織、花倉織、手縞、煮綛芭蕉布、花織手巾のなかのひとつ。ご苦労を重ねた末に喜如嘉で復元されたこの芭蕉布の魅力を、存分に味わっていただきたいという思いを込めて今回、企画しました」と西村さん。
シルクラブ
会場では西村さんが長い時間をかけて集めてきた芭蕉布が揃うほか、多彩なイベントが企画されています。
オープニングとして、国選択の無形民俗文化財である勢理客（じっちゃく）の獅子舞が特別に上演される。
◇勢理客（じっちゃく）の獅子舞
4月8日（土）12時と14時の2回上演
展示会のオープニングとして、沖縄県浦添市勢理客に伝承される芸能「勢理客の獅子舞」が勢理客獅子舞保存会によって上演されます。400年以上の歴史をもつ国選択無形民俗文化財の獅子舞で、獅子の毛は芭蕉の繊維で作られています。
◇平良美恵子さん講演会
「芭蕉布と江戸上り」4月9日（日）13時～
「着る薬としての芭蕉布」4月10日（月）13時～
平良敏子さんの義娘であり、喜如嘉芭蕉布事業協同組合の理事長を務める平良美恵子さんの講演会が開催されます。
◇ビデオ放映
「芭蕉布を織る女たち 連帯の手わざ」（ポーラ財団/1981年/桜映画社）
4月11日（火）12日（水）13日（木）
「芭蕉布 平良敏子のわざ」（文化庁/シネマ沖縄/平成26年度）
4月14日（金）15日（土）16日（日）
芭蕉布の貴重な映像を地下ホールで放映。沖縄県立浦添高等学校写真部による芭蕉布の制作工程の写真も展示されます。
◇ヤンバルより愛を込めて
幻の糸芭蕉の芯（グイ）入りちんすこう（限定100個）、芭蕉布会館の人気の手ぬぐい、「やんばる酒造」の人気のオリジナルTシャツなどを購入することができます。
◇カフェ・ルル
会期中「シルクラブ」の2階がカフェに。大宜味村の黒糖を使ったシフォンケーキや琉球肉桂のお茶を楽しむことができます。
シルクラブ
今回の展示会名の「花はすぐ花とはならず」という言葉は、柳宗悦が『芭蕉布物語』のなかで織物について語った言葉です。 布を織り始めるまでをちょうど花が開くまでにたとえ、種が蒔かれ、芽を出し、幹が育ち、葉が茂り、長い準備の時を経るのと同じであると記しています。
「柳宗悦氏のその言葉は、伝統の道を辿る芭蕉布となるまでの大変長い制作工程はもちろん、芭蕉布を復興するまでの女性たちの長い物語に重なり、私のなかで喜如嘉のすべてに敬意を払う言葉に変わりました。喜如嘉の芭蕉布とは、作り手が覚悟をもっていまも咲かせ続ける美しい花。喜如嘉を見守る御嶽（うたき）である七滝のように、これからもいろいろに軌道を変えながら、未来に続いていく花であると思っています」と西村さん。
喜如嘉の美しい「花」に出合いに、ぜひお出かけください。
喜如嘉の芭蕉布 ～花はすぐ花とはならず
期間： 2023年4月8日（土）～16日（日）
時間：午前11時～午後6時（会期中無休）
場所：シルクラブGoogle mapで確認
住所：東京都中野区沼袋2-30-4
お問い合わせ先：03-3389-4301
入場無料
シルクラブ公式サイトシルクラブ公式インスタグラム
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